「離婚したら苗字は自動的に旧姓に戻るの?」
「子どもの苗字も一緒に変わる?」
「今の苗字をそのまま使い続けることはできる?」
離婚すると、婚姻によって姓を変えた人は原則として婚姻前の姓に戻ります。一方、手続きをすれば離婚後も婚姻中の姓を使い続けることもできます。
ただし、自分の姓と子どもの姓は別に考える必要があります。親が旧姓に戻ったからといって、子どもの姓や戸籍が自動的に変わるわけではありません。
この記事では、離婚後の姓の選択肢、婚姻中の姓を使い続ける手続き、子どもの姓や戸籍を変更する方法、姓が変わった場合に確認したい名義変更についてわかりやすく解説します。
離婚後の姓の選択肢は2つ
婚姻によって姓を変更した人には、離婚後、大きく分けて次の2つの選択肢があります。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 婚姻前の姓に戻る | 離婚によって原則として婚姻前の姓に戻る |
| 婚姻中の姓を使い続ける | 婚氏続称の届出を行う |
どちらを選ぶかによって、離婚後の名義変更や子どもの姓との関係も変わります。
婚姻前の姓に戻る場合
婚姻によって姓を変更した人は、原則として離婚すると婚姻前の姓に戻ります。
たとえば、結婚前が「田中」、結婚によって「鈴木」になった場合、特別な届出をしなければ離婚後は原則として「田中」に戻ります。
婚姻前の姓に戻るメリット
婚姻前の姓に戻すことで、以前の名前で生活を再スタートできるという点があります。
また、実家の家業や仕事などで婚姻前の姓を使用したい場合には、戻す方が生活しやすいケースもあります。
婚姻前の姓に戻るときの注意点
戸籍上の姓が変わるため、運転免許証や金融機関、クレジットカードなど、登録している氏名の変更手続きが必要になることがあります。
また、子どもの姓は親と一緒に自動的に変わるわけではありません。
そのため、親が婚姻前の姓に戻ると、親と子どもで姓が異なる状態になることがあります。
婚姻中の姓をそのまま使う「婚氏続称」
離婚後も婚姻中に使用していた姓をそのまま使いたい場合には、「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出します。
一般的には「婚氏続称」と呼ばれています。
婚氏続称を選ぶ理由
婚姻中の姓を使い続ける理由は人によって異なります。
たとえば、
・仕事で長年その姓を使用している
・取引先や顧客に名前が定着している
・子どもと同じ姓を使い続けたい
・離婚後に多くの名義変更をする負担を減らしたい
などが考えられます。
ただし、婚氏続称をしたからといって、子どもが自動的に自分の戸籍へ移るわけではありません。
「同じ苗字だから同じ戸籍」というわけではない点に注意してください。
婚氏続称の手続きは離婚から3か月以内
婚姻中の姓をそのまま使用したい場合には、離婚届と同時、または離婚の日の翌日から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出します。
届出先は、本籍地や所在地の市区町村役場などです。
この届出をする際、元配偶者の同意を得る必要はありません。
離婚後も婚姻中の姓を使いたいと決めている場合には、離婚届と同時に手続きしておくとわかりやすいでしょう。
3か月を過ぎてから婚姻中の姓に変えたい場合
離婚後3か月以内に婚氏続称の届出をしなかった場合、単純な届出だけで婚姻中の姓へ戻すことはできません。
家庭裁判所で氏の変更許可を得たうえで、市区町村へ氏変更の届出をする必要があります。
氏の変更が認められるためには、社会生活上、氏を変更しないことで著しい支障が生じるなどの「やむを得ない事由」が必要とされています。
そのため、離婚時には今後どの姓を使用するかをできるだけ早めに考えておくことが大切です。
一度婚氏続称した後に旧姓へ戻すことはできる?
婚氏続称の届出をして婚姻中の姓を使い続けた後、
「やっぱり婚姻前の姓に戻したい」
と思うこともあります。
この場合、婚氏続称の届出を取り消すだけで自由に元へ戻れるわけではありません。
家庭裁判所に「氏の変更許可」を申し立て、許可を得たうえで市区町村へ届出をする必要があります。裁判所も、婚氏続称後に婚姻前の氏へ戻したい場合には氏の変更申立てが必要と案内しています。
家庭裁判所では、氏を変更する必要性や社会生活への影響などを踏まえて判断されます。
そのため、「とりあえず今の姓を使っておいて、あとで簡単に旧姓へ戻せばいい」とは考えない方がよいでしょう。
離婚したら子どもの苗字はどうなる?
ここは特に間違えやすいポイントです。
親が離婚によって姓を変更しても、子どもの姓は自動的には変わりません。
たとえば、離婚によって母親が婚姻前の姓へ戻っても、子どもが父親の戸籍に入って父親の姓を称している場合、子どもはそのまま父親の姓を使い続けます。
親権を母親が持つことになったからといって、子どもの姓や戸籍が自動的に母親と同じになるわけではありません。
子どもの苗字を自分と同じにするには?
離婚後、親と子どもの姓が異なり、子どもの姓を自分と同じにしたい場合には、原則として家庭裁判所の「子の氏の変更許可」を利用します。
裁判所は、父母の離婚後、父の戸籍にあり父の姓を使っている子どもが母の戸籍に移り、母の姓を称したい場合には、この手続きが必要と案内しています。
基本的な流れは次のとおりです。
① 親の戸籍を準備する
② 家庭裁判所に子の氏の変更許可を申し立てる
③ 家庭裁判所の許可を得る
④ 市区町村役場に入籍届を提出する
家庭裁判所で許可を受けただけでは、子どもの戸籍が自動的に移動するわけではありません。
許可後に市区町村へ入籍届を提出する必要があります。
子の氏の変更は誰が申し立てる?
子どもが15歳以上の場合は、子ども本人が申立人となります。
子どもが15歳未満の場合には、法定代理人が子どもを代理して申し立てます。
2026年4月から離婚後の共同親権制度が始まっているため、共同親権となっている15歳未満の子どもの氏を変更する場合には注意が必要です。
共同親権の場合、原則として父母が共同で申し立てる必要があります。父母の間で意見が一致しない場合には、別の家庭裁判所の手続きが必要になることがあります。
婚氏続称すれば子どもの戸籍も同じになる?
なりません。
離婚後も母親が婚姻中の姓を使い続けた場合、見た目上は母親と子どもの苗字が同じことがあります。
しかし、同じ文字の姓を名乗っていても、子どもが自動的に母親の戸籍に移るわけではありません。
子どもを母親の戸籍へ移す場合には、戸籍上の関係を確認したうえで、必要に応じて子の氏の変更許可と入籍届の手続きを行います。
「苗字が同じだから何もしなくても同じ戸籍になる」と誤解しないようにしましょう。
子どもの苗字を変えるかどうかは慎重に考える
子どもの姓を親と同じにすることには、親子で同じ姓を使用できるというメリットがあります。
一方、子どもがすでに学校や地域で現在の姓を長く使用している場合には、姓を変えることが生活上の負担になる可能性もあります。
特に子どもがある程度の年齢になっている場合には、親だけで決めるのではなく、子どもの気持ちも確認しながら考えることが大切です。
旧姓に戻ったときに確認したい名義変更
婚姻前の姓へ戻る場合には、戸籍上の氏名が変わるため、さまざまな登録情報を変更する必要があります。
主に確認したいのは次のようなものです。
・マイナンバーカード
・運転免許証
・パスポート
・銀行口座
・クレジットカード
・証券口座
・携帯電話などの契約
・生命保険などの保険契約
・勤務先の登録情報
・年金に関する登録情報
・不動産登記
・自動車の登録情報
・各種会員サービス
現在は従来の健康保険証の新規発行は終了しているため、勤務先や加入している健康保険に氏名変更を届け出て、マイナ保険証や資格確認書など必要な手続きを確認します。
また、「年金手帳」も現在は新規発行されていないため、勤務先や年金事務所などで必要な氏名変更手続きを確認しましょう。
手続きの内容は勤務先や各金融機関などによって異なります。
仕事では旧姓を使い続けられる?
戸籍上の姓を婚姻前の姓に戻した場合でも、勤務先が認めていれば、仕事上は婚姻中に使用していた姓を通称として使い続けられる場合があります。
反対に、婚氏続称をして戸籍上は婚姻中の姓を使用しながら、仕事上は婚姻前の姓を使用するケースもあります。
通称使用のルールは勤務先によって異なるため、会社の人事担当者などに確認してください。
よくある質問
Q. 離婚すると自動的に旧姓に戻りますか?
婚姻によって姓を変更した人は、原則として離婚によって婚姻前の姓に戻ります。
離婚後も婚姻中の姓を使用したい場合には、離婚の日から3か月以内に婚氏続称の届出を行います。
Q. 婚氏続称に元夫の許可は必要ですか?
必要ありません。
婚姻中の姓を使い続けたい本人が、期間内に市区町村へ届出を行います。
Q. 親権者になれば子どもの苗字も自動的に変わりますか?
変わりません。
親権者が誰になるかと、子どもの氏や戸籍は別の問題です。
子どもの姓を親権者と同じにして戸籍を移す場合には、原則として家庭裁判所の子の氏の変更許可と、その後の入籍届が必要です。
Q. 子どもが15歳以上の場合は親が手続きできますか?
子どもが15歳以上の場合、子の氏の変更許可は子ども本人が申し立てます。
15歳未満の場合には法定代理人が代理して申し立てます。
Q. 婚氏続称した後に旧姓へ戻せますか?
家庭裁判所に氏の変更許可を申し立て、許可を得れば変更できる場合があります。
婚氏続称の届出をした後は、単純な届出だけで自由に婚姻前の姓へ戻すことはできません。
Q. 離婚後3か月を過ぎても婚姻中の姓に戻せますか?
家庭裁判所の許可を得て氏を変更する方法があります。
ただし、家庭裁判所の許可には「やむを得ない事由」が必要とされるため、3か月以内の婚氏続称届とは手続きが異なります。
まとめ
離婚によって姓を変更した人は、原則として婚姻前の姓に戻ります。
離婚後も婚姻中の姓を使い続けたい場合には、離婚の日から3か月以内に婚氏続称の届出をする必要があります。
また、親の姓が変わっても子どもの姓や戸籍は自動的には変わりません。子どもの姓を親と同じにして戸籍を移す場合には、原則として家庭裁判所の「子の氏の変更許可」を受け、その後、市区町村へ入籍届を提出します。
2026年4月からは離婚後の共同親権制度も始まっており、共同親権となっている15歳未満の子どもの氏を変更する場合には、原則として父母共同での申立てが必要です。
どの姓を選ぶかは、仕事や生活、子どもの学校生活などにも関わります。離婚届を提出する前に、離婚後どの姓を使いたいのか、子どもの姓をどうするのかまで一度整理しておくとよいでしょう。

