「離婚すると財産は半分ずつになるの?」
「夫名義の預金や家も財産分与の対象?」
「専業主婦でも財産分与を受け取れる?」
離婚を考えたときによく出てくるのが「財産分与」という言葉です。
財産分与では、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を整理して分けます。名義が夫だけになっている財産でも、実質的に夫婦の協力によって形成されたものであれば財産分与の対象になる場合があります。
一方、結婚前から持っていた財産や、婚姻中でも相続や贈与によって取得した財産など、財産分与の対象にならないものもあります。
この記事では、財産分与の基本から、対象になる財産・ならない財産、分け方、2026年4月からの変更点までわかりやすく解説します。
- 財産分与とは
- 財産分与にはどんな意味がある?
- 財産分与の対象になる主な財産
- 相手名義の預金も財産分与の対象になる?
- 不動産はどうやって分ける?
- 生命保険や学資保険も対象になる?
- 退職金も財産分与の対象になる?
- 年金は財産分与とは別に確認する
- 財産分与の対象にならない財産
- 結婚前からの預金と結婚後の預金が同じ口座にある場合
- 借金も財産分与の対象になる?
- 財産分与の割合は原則2分の1?
- 専業主婦でも財産分与を受けられる?
- 夫婦で合意すれば半分以外の分け方もできる?
- 財産分与はいつの財産を基準にする?
- 財産分与をする流れ
- 2026年4月から財産分与のルールが変わった
- 離婚前に財産を確認しておく
- 合意した財産分与は書面に残す
- よくある質問
- まとめ
財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際または離婚後に分けることです。裁判所もこのように財産分与を案内しています。
重要なのは、財産の名義だけで判断しないことです。
たとえば、婚姻中に夫の収入で購入した自宅が夫単独名義になっていても、妻が家事や育児を担いながら家庭を支えていた場合には、実質的に夫婦の協力によって形成された財産として、財産分与の対象になることがあります。
「夫名義だから自分には関係ない」と思い込まず、婚姻中にどのような財産を形成したのか確認することが大切です。
財産分与にはどんな意味がある?
財産分与では、主に婚姻中に築いた財産を清算することが中心になります。
一般的には、次のような性質があると説明されています。
清算的財産分与
婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を清算するものです。
離婚時の財産分与では、この清算的財産分与が中心になります。
扶養的財産分与
離婚後、一方の配偶者がすぐに自立した生活を送ることが難しい場合などに、生活を支える目的で行われることがあります。
ただし、専業主婦だったから必ず扶養的財産分与が認められるというものではありません。
慰謝料的な要素を含む財産分与
離婚の原因となった行為について慰謝料が問題になる場合に、財産分与と慰謝料をまとめて解決することもあります。
ただし、財産分与と慰謝料は本来それぞれ別の問題です。
財産分与の対象になる主な財産
財産分与の対象になるのは、基本的に婚姻中に夫婦が協力して形成・維持した財産です。
たとえば、
・預貯金
・不動産
・自動車
・生命保険や学資保険の解約返戻金
・株式、投資信託などの有価証券
・婚姻期間中に形成された退職金の一定部分
・家具や家電など一定の財産
などがあります。
ただし、すべてが単純に現在価値の半分になるわけではありません。
それぞれの財産について、いつ取得したのか、どのような資金で取得したのか、別居時点などでどの程度残っているのかなどを確認する必要があります。
相手名義の預金も財産分与の対象になる?
対象になることがあります。
財産分与では「誰の名義になっているか」だけで決めるわけではありません。
たとえば婚姻後、夫が働いて得た給与を夫名義の口座に貯金していたとしても、妻が家事や育児などを担い、夫婦が協力して形成した預金であれば財産分与の対象になる可能性があります。
反対に、相手名義だからといってすべてが財産分与の対象になるわけでもありません。
結婚前から持っていた預金など、夫婦の協力によって形成したものではない財産が混ざっている場合には区別して考える必要があります。
不動産はどうやって分ける?
住宅や土地も、婚姻中に夫婦の協力によって取得したものであれば財産分与の対象になることがあります。
ただし、不動産を実際に半分に切って分けることはできません。
そのため、
・売却して代金を分ける
・一方が自宅を取得し、もう一方に代償金を支払う
・住宅ローンとの関係を整理する
などの方法を検討します。
住宅ローンが残っている場合には、現在の不動産価格だけでなく、ローン残高や名義、金融機関との契約も確認する必要があります。
生命保険や学資保険も対象になる?
婚姻中に保険料を支払い、解約返戻金が形成されている生命保険や学資保険などは、財産分与の対象になる場合があります。
実際に解約するとは限らず、基準となる時点の解約返戻金額を確認して財産価値を計算する方法などがあります。
保険会社から解約返戻金の証明書などを取り寄せて確認することがあります。
退職金も財産分与の対象になる?
退職金も、婚姻期間中の夫婦の協力によって形成されたと考えられる部分について、財産分与の対象になる場合があります。
ただし、
・すでに退職して受け取っている
・退職予定が近い
・退職までかなり長い期間がある
などの事情によって判断が変わることがあります。
「将来退職金が出るから必ず半分もらえる」と単純に考えず、勤務先や退職時期など個別の事情を確認する必要があります。
年金は財産分与とは別に確認する
年金については、一般的な財産分与とは別に「年金分割」という制度があります。
離婚時の年金分割では、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録を一定の割合で分割します。
「年金も財産分与で半分になる」という制度ではありません。
年金分割については「離婚後の年金はどうなる?年金分割をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
財産分与の対象にならない財産
一方、夫婦の協力によって形成されたとはいえない財産は、原則として清算的財産分与の対象にならないことがあります。
代表的なのは、
・婚姻前から所有していた預貯金や不動産
・婚姻中に相続によって取得した財産
・婚姻中に一方だけが贈与を受けた財産
などです。
こうした財産は一般に「特有財産」などと呼ばれます。
ただし、婚姻前から所有していた財産であっても、その維持や価値の増加に夫婦共有の資金や他方配偶者の協力が大きく関係している場合など、単純に全額対象外とは言い切れないケースがあります。法務省の検討資料でも、婚姻前からの財産であっても他方配偶者の協力によって維持された事情などがある場合には、財産分与との関係で考慮され得ることが示されています。
結婚前からの預金と結婚後の預金が同じ口座にある場合
実務上、問題になりやすいのがこれです。
たとえば結婚前に300万円入っていた口座を、結婚後も給与振込口座として使い続けている場合、結婚前の預金と婚姻中に形成した財産が同じ口座に混在します。
この場合、
「口座にあるお金は全部自分のもの」
「結婚後の口座だから全部半分」
と単純に判断することはできません。
結婚時点の残高、入出金履歴などから、どの部分が婚姻前からの財産なのか確認する必要があります。
そのため、通帳や取引履歴などは早めに確保しておくことが大切です。
借金も財産分与の対象になる?
借金についても、何のために負った債務なのかによって考え方が変わります。
たとえば夫婦の共同生活のために組んだ住宅ローンなどは、財産分与を考える際に考慮されることがあります。
一方、婚姻前からの個人的な借金や、夫婦生活とは関係のない一方だけの浪費による借金などは、単純に夫婦で半分ずつ負担するものとは限りません。
財産だけでなく負債についても一覧にして確認しておきましょう。
財産分与の割合は原則2分の1?
財産分与については、夫婦の財産形成への寄与を2分の1ずつとして扱うことが多くあります。
法務省も、家庭裁判所の審判では、共働きの場合だけでなく、一方が専業主婦・専業主夫の場合でも、夫婦の財産を2分の1ずつに分けるよう命じられることが多いと案内しています。
そのため、
「夫が全部稼いだのだから妻には財産分与をする必要がない」
とは通常なりません。
家事や育児なども財産形成への協力として考えられます。
ただし、必ずすべてのケースで完全に2分の1になると決まっているわけではありません。具体的な財産形成への寄与などによって個別に判断される場合があります。
専業主婦でも財産分与を受けられる?
専業主婦だったからといって、財産分与を受けられないわけではありません。
一方が仕事をして収入を得ていても、もう一方が家事や育児を担って家庭生活を支えていたのであれば、夫婦が協力して財産を形成したと考えられます。
法務省も、専業主婦・専業主夫のケースでも、家庭裁判所では2分の1ずつに分ける判断がされることが多いと案内しています。
夫婦で合意すれば半分以外の分け方もできる?
夫婦で話し合って合意できるのであれば、必ず機械的にすべてを2分の1ずつにしなければならないわけではありません。
私が離婚に関する実務に携わる中でも、預貯金だけを半分にするのではなく、
「一方が不動産を取得する代わりに、もう一方が別の財産を多く取得する」
など、夫婦の事情に応じた分け方をするケースがありました。
ただし、養育費と財産分与はそれぞれ性質の異なる問題です。
元原稿にあった「養育費を受け取らない代わりに不動産を全部もらう」というような取り決めについては、子どもの養育費まで含めて安易に損得だけで交換条件にするのはおすすめしません。
特に高額な財産や長期の養育費が関係する場合には、税金や将来の支払いリスクも含めて慎重に検討しましょう。
財産分与はいつの財産を基準にする?
財産分与では、「いつの時点の財産を対象とするのか」が問題になることがあります。
夫婦が別居している場合には、婚姻共同生活が実質的に終了した時点などが財産形成の基準として問題になるケースがあります。
ただし、具体的な基準時は個別事情によって異なることがあるため、
「離婚届を出した日の残高を必ず半分にする」
とは限りません。
別居前後に大きなお金の移動がある場合には、取引履歴を残しておくことが重要です。
財産分与をする流れ
STEP1 夫婦の財産を一覧にする
まず、双方にどのような財産があるのか整理します。
・預貯金
・不動産
・保険
・株式、投資信託
・自動車
・退職金
・住宅ローンなどの負債
について、名義にかかわらず確認します。
STEP2 財産分与の対象か確認する
それぞれについて、
「婚姻中に夫婦の協力で形成した財産か」
「結婚前から持っていたものか」
「相続や贈与によるものか」
などを整理します。
STEP3 評価額を確認する
預金であれば残高、不動産であれば評価額、保険であれば解約返戻金などを確認します。
財産によって評価方法が異なります。
STEP4 夫婦で分け方を話し合う
対象財産がわかったら、どちらが何を取得するか話し合います。
合意できた場合には、離婚協議書などの書面に具体的な内容を残しておきましょう。
STEP5 合意できなければ家庭裁判所を利用する
離婚後に財産分与について話し合いがまとまらない場合や、話し合いができない場合には、家庭裁判所へ財産分与の調停または審判を申し立てることができます。
離婚前であれば、離婚調停の中で財産分与について話し合うこともできます。
2026年4月から財産分与のルールが変わった
2026年4月1日から、財産分与に関する民法のルールが改正されています。
特に重要なのが、請求期間の延長と裁判手続の利便性向上です。
財産分与の請求期間が5年に延長
2026年4月1日以降に離婚した場合、家庭裁判所へ財産分与を申し立てることができる期間は、離婚の日の翌日から5年です。
一方、2026年3月31日以前に離婚した場合には、原則として従来どおり離婚の日の翌日から2年です。
離婚した時期によって期限が異なるため注意してください。
財産に関する情報を開示させる仕組みも整備
2026年4月施行の改正では、財産分与に関する裁判手続についても利便性を高める見直しが行われています。
相手が財産を明らかにしない場合でも、家庭裁判所の手続きの中で必要な資料の提出や財産情報の開示が問題になることがあります。
ただし、
「相手が隠している銀行口座を裁判所が自動的に全部探してくれる」
という制度ではありません。
手続きの内容や必要性に応じて裁判所が判断するものなので、相手が財産を隠している疑いがある場合には、早めに資料を整理しておくことが重要です。
離婚前に財産を確認しておく
財産分与で特に重要なのは、離婚後になってから初めて相手の財産を探し始めないことです。
離婚前や別居前に、適法に確認できる範囲で、
・金融機関名
・口座情報
・不動産
・生命保険
・証券会社
・住宅ローン
・勤務先の退職金制度
などを整理しておくと、その後の話し合いが進めやすくなります。
相手のパスワードを勝手に使ってインターネットバンキングなどへログインするといった方法は避け、適法な範囲で資料を確認してください。
合意した財産分与は書面に残す
夫婦で財産分与について合意できた場合には、口頭だけで終わらせず書面に残しましょう。
たとえば、
「夫から妻へ財産分与として300万円を支払う」
と決めた場合にも、
・金額
・支払期限
・振込先
・一括払いか分割払いか
などを具体的に記載します。
不動産の名義変更や多額の金銭の支払いがある場合には、必要に応じて弁護士や司法書士、税理士などへの確認も検討してください。
よくある質問
Q. 専業主婦でも財産分与を受け取れますか?
受け取れる可能性があります。
夫名義の財産であっても、婚姻中に夫婦の協力によって形成された財産であれば財産分与の対象になります。
家庭裁判所では、専業主婦・専業主夫の場合でも2分の1ずつに分けるよう命じられることが多いと法務省も案内しています。
Q. 相手名義の銀行口座も対象になりますか?
名義だけで判断されるわけではありません。
婚姻中に夫婦の協力によって形成した預金であれば、相手単独名義の口座でも財産分与の対象になる場合があります。
Q. 結婚前から持っていた貯金も半分になりますか?
原則として、婚姻前から所有していた財産は夫婦の協力によって形成した財産ではないため、財産分与の対象外として扱われることがあります。
ただし、婚姻後の財産と混在している場合などには、どこまでが婚姻前の財産なのか資料で確認する必要があります。
Q. 親から相続した財産も分けなければいけませんか?
相続によって一方が取得した財産は、原則として財産分与の対象外と考えられます。
ただし、個別の事情によって検討が必要になる場合もあるため、高額な財産がある場合には専門家への確認を検討してください。
Q. 離婚後でも財産分与を請求できますか?
できます。
2026年4月1日以降に離婚した場合には、原則として離婚の日の翌日から5年以内に家庭裁判所へ申立てをする必要があります。2026年3月31日以前に離婚した場合には原則2年です。
Q. 相手が財産を隠している場合は?
まず、自分が持っている通帳、取引履歴、不動産や保険の資料などを整理しましょう。
家庭裁判所の財産分与手続では、当事者から財産について確認したり、必要な資料を提出してもらったりしながら話し合いが進められます。
相手が財産を開示しないなど問題がある場合には、利用できる裁判所の手続きについて弁護士へ相談する方法もあります。
まとめ
財産分与は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時または離婚後に分ける制度です。
名義が夫だけになっている預貯金や不動産でも、夫婦の協力によって形成されたものであれば財産分与の対象になることがあります。
一方、結婚前から所有していた財産や、婚姻中に相続・贈与によって取得した財産などは、原則として対象にならない場合があります。
財産分与では2分の1ずつと判断されることが多く、専業主婦・専業主夫であっても「収入がなかったから何ももらえない」というものではありません。
また、2026年4月1日以降に離婚した場合には、家庭裁判所への財産分与の申立期間が原則5年に延長されています。
離婚を考えている場合には、まず夫婦にどのような財産と負債があるのか一覧にし、通帳や保険、不動産などの資料を整理しておくことが大切です。

