「離婚するなら慰謝料を請求できる?」
「不倫やDVが原因の場合はいくらくらいもらえる?」
「証拠がないと請求できない?」
離婚すると必ず慰謝料が発生するわけではありません。相手の行為によって精神的苦痛を受け、離婚に至った場合などに慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料が認められるかどうかや金額は、離婚原因、行為の内容や期間、婚姻期間、証拠などによって大きく異なります。
この記事では、離婚慰謝料を請求できるケース、金額を考えるときのポイント、必要な証拠、請求方法についてわかりやすく解説します。
離婚慰謝料とは
離婚慰謝料とは、配偶者の不法行為などによって精神的苦痛を受けた場合に、その損害を賠償するために支払われる金銭です。
裁判所も、慰謝料について「相手方の不法行為によって被った精神的苦痛を慰謝するための損害賠償」と案内しています。相手の行為によって離婚せざるを得なくなったような場合などに請求することができます。
そのため、
「離婚したから慰謝料をもらえる」
というものではありません。
相手に慰謝料の原因となる行為があったか、その行為によってどの程度精神的苦痛を受けたかなどが問題になります。
慰謝料を請求できる可能性があるケース
代表的なのは、次のようなケースです。
・不貞行為
・DVなどの暴力
・悪意の遺棄
・精神的な虐待やモラハラ
・その他、婚姻関係を破綻させる原因となる重大な行為
ただし、これらに当てはまりそうだからといって、必ず慰謝料が認められるわけではありません。
具体的な行為の内容や頻度、婚姻関係への影響、証拠などを踏まえて判断されます。
不倫・不貞行為の場合
配偶者が第三者と不貞行為を行っていた場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、
「異性と食事をしていた」
「連絡を頻繁に取っていた」
「異性の家へ行っていた」
という事情だけで、必ず不貞行為が認められるわけではありません。
慰謝料を請求する場合には、配偶者と第三者との性的関係を裏付ける証拠が重要になります。
たとえば、
・ホテルへの出入りがわかる写真
・不貞関係を認めるLINEやメール
・本人が不貞行為を認めた録音や書面
・長期間の交際状況がわかる資料
などが考えられます。
ただし、どの証拠が十分かはケースによって異なります。
DVの場合
配偶者から身体的な暴力を受けていた場合にも、慰謝料を請求できる可能性があります。
証拠としては、
・けがの写真
・医療機関の診断書
・暴力時の録音や動画
・警察への相談記録
・配偶者暴力相談支援センターなどへの相談記録
・暴力についてのLINEやメール
などがあります。
DVがある場合には、慰謝料の問題よりも安全の確保を優先する必要があることもあります。
相手と直接交渉することで危険が生じる可能性がある場合には、警察や自治体の相談窓口、弁護士などへの相談を検討してください。
モラハラの場合
暴言、侮辱、人格否定、過度な束縛など、精神的な虐待が継続している場合には、慰謝料が問題になることがあります。
ただし、モラハラは身体的な暴力と比べて外から確認しにくいため、「言われた」「言っていない」という争いになりやすい特徴があります。
そのため、
・録音
・LINEやメール
・日記
・第三者への相談記録
・医療機関の診断書
・具体的な出来事を記録したメモ
などを残しておくことが重要です。
日記やメモだけで必ず慰謝料が認められるわけではありませんが、他の証拠と組み合わせて事情を説明する材料になることがあります。
悪意の遺棄の場合
夫婦には、同居し、互いに協力し扶助する義務があります。
正当な理由なく家を出て生活費を一切渡さないなど、夫婦としての義務を意図的に果たさない行為が「悪意の遺棄」に当たる場合があります。
ただし、単に別居したというだけで悪意の遺棄になるわけではありません。
別居に至った事情や生活費の負担状況などを含めて判断されます。
慰謝料を請求するのが難しいケース
一方、次のような事情だけでは、慰謝料を請求することが難しい場合があります。
・性格の不一致
・価値観の違い
・生活習慣の違い
・双方に同程度の原因がある
・どちらか一方に明確な責任があるとはいえない
夫婦関係がうまくいかなくなったというだけでは、必ずしも慰謝料が発生するわけではありません。
慰謝料はいくらもらえる?
離婚慰謝料には、
「不倫なら○万円」
「DVなら○万円」
という法律上の一律の金額はありません。
インターネット上では「50万円〜300万円」「100万円〜500万円」などの相場が紹介されることがありますが、実際の金額はケースによって大きく異なります。
そのため、この記事では「自分は不倫だから必ず200万円」などと判断しないことをおすすめします。
慰謝料の金額に影響する事情
慰謝料の金額を判断する際には、さまざまな事情が考慮されます。
たとえば、
・婚姻期間
・行為の内容や悪質性
・行為が続いた期間
・婚姻関係への影響
・精神的苦痛の程度
・子どもへの影響
・不貞行為などが離婚原因となった程度
・当事者間の交渉経緯
などです。
なお、「相手の年収が高いほど必ず慰謝料も高くなる」と単純に決まるものではありません。
相手の資力が交渉や支払方法に影響することはありますが、慰謝料額そのものは主に精神的損害の内容や行為の程度などを踏まえて判断されます。
実務で感じた慰謝料請求のリアル
私が離婚や慰謝料に関する実務に携わる中で感じたのは、相手に慰謝料の原因となる行為を認めてもらえないケースが少なくないということです。
本人にとっては、
「絶対に不倫していた」
「長期間モラハラを受けていた」
と明らかに感じる出来事でも、相手が否定した場合には、それをどのような資料で裏付けるかが重要になります。
ただし、「慰謝料は証拠がすべて」とまで言い切る必要はありません。
相手が事実を認めている場合や、話し合いによって慰謝料について合意できる場合もあります。
一方で、相手が事実そのものを否定している場合には、証拠の重要性が非常に高くなります。
精神的苦痛をどのように証明する?
「精神的にとてもつらかった」ということ自体は本人にとって明らかでも、第三者からはその程度を確認するのが難しい場合があります。
そのため、
・医療機関の診断書
・通院履歴
・家族や知人への相談記録
・警察や公的機関への相談記録
・当時のLINEやメール
・出来事を記録した日記
などが事情を説明する材料になることがあります。
ただし、精神的苦痛について診断書がなければ慰謝料を請求できない、というわけでもありません。
さまざまな事情を総合的に見て判断されます。
慰謝料の請求方法
慰謝料を請求する方法は一つではありません。
相手との関係や、離婚前か離婚後かによって進め方が変わります。
STEP1 証拠や資料を整理する
まず慰謝料を求める理由と、それを確認できる資料を整理します。
たとえば、
・LINEやメール
・写真
・診断書
・録音
・警察や相談機関の記録
・不倫を認めた書面
などです。
証拠を集める場合には、相手のアカウントへ無断でログインするなど違法となる可能性のある方法は避けてください。
STEP2 相手と話し合う
相手が話し合いに応じる場合には、まず慰謝料について協議する方法があります。
金額や支払方法について合意できた場合には、口約束だけで終わらせず書面に残しておきましょう。
分割払いの場合には、
・毎月の金額
・支払日
・振込先
・支払期間
などを明確にします。
STEP3 書面で請求する
直接の話し合いが難しい場合には、書面で慰謝料を請求する方法があります。
内容証明郵便を利用すれば、
「いつ」
「どのような内容の文書を」
「誰から誰へ差し出したか」
を日本郵便に証明してもらうことができます。
ただし、内容証明郵便そのものに、相手へ慰謝料の支払いを強制する効力があるわけではありません。
STEP4 調停を利用する
離婚前の場合には、夫婦関係調整調停の中で、離婚とあわせて慰謝料について話し合うことができます。
離婚後に慰謝料について話し合いがまとまらない場合や、相手と直接話し合うことができない場合には、家庭裁判所の慰謝料請求調停を利用することができます。
調停では、双方から離婚に至った経緯や原因などを聞き、必要に応じて資料を提出しながら話し合いを進めます。
STEP5 訴訟を検討する
調停でも解決できない場合には、訴訟を検討することがあります。
離婚そのものについて争っている場合には、離婚訴訟とあわせて離婚に伴う慰謝料を求めることもできます。
裁判では、慰謝料の原因となる行為やその内容について、証拠に基づいて主張することが重要になります。
不倫相手にも慰謝料を請求できる?
不貞行為の場合には、一定の条件を満たせば、不貞相手に対して慰謝料を請求できる場合があります。
ただし、
「不倫した相手なら必ず請求できる」
というわけではありません。
たとえば、不貞相手が既婚者であることを知っていたか、知ることができたか、すでに夫婦関係が破綻していなかったかなど、個別の事情が問題になることがあります。
また、配偶者と不貞相手の両方へ請求できるケースでも、同じ精神的損害について二重に慰謝料を受け取れるという意味ではありません。
慰謝料請求には時効がある
慰謝料の請求には時効があります。
ただし、「離婚慰謝料はすべて離婚から3年」とだけ覚えるのはおすすめできません。
どの行為について誰に対して何を請求するのかによって、時効の起算点などが問題になることがあります。
特に不貞相手への請求と、元配偶者に対する離婚慰謝料では、同じように考えられない場合があります。
離婚から時間が経っている場合や、時効が近い可能性がある場合には、早めに弁護士などへ確認することをおすすめします。
相手にお金がない場合は?
慰謝料を請求できることと、実際に支払ってもらえることは別問題です。
相手に十分な資力がない場合には、
・分割払い
・支払期限を定める
・公正証書を作成する
などを検討することがあります。
ただし、分割払いにする場合は支払いが途中で止まる可能性も考えて、書面の内容を慎重に決めることが重要です。
弁護士に相談した方がいいケース
慰謝料請求は必ず弁護士に依頼しなければならないわけではありません。
ただし、
・相手が不倫やDVを全面的に否定している
・証拠として何が使えるかわからない
・慰謝料の金額について大きく争っている
・不貞相手にも請求したい
・離婚訴訟を検討している
・時効が近い可能性がある
・相手と直接連絡を取りたくない
といった場合には、早めに相談する方法もあります。
よくある質問
Q. 離婚後でも慰謝料を請求できますか?
離婚後に慰謝料について話し合ったり、家庭裁判所の慰謝料請求調停を利用したりすることはできます。
ただし、慰謝料請求には時効があるため、離婚から時間が経っている場合は早めに確認してください。
Q. 証拠がなければ慰謝料は請求できませんか?
請求すること自体ができないわけではありません。
相手が事実を認めて合意する場合もあります。
ただし、相手が不倫やDVなどを否定している場合、調停や裁判で自分の主張を裏付ける証拠は非常に重要になります。
Q. 不倫相手にも慰謝料を請求できますか?
条件によっては請求できる場合があります。
ただし、不貞相手が婚姻の事実を知っていたか、夫婦関係がすでに破綻していなかったかなど、個別の事情によって判断が変わります。
Q. モラハラでも慰謝料を請求できますか?
継続的・悪質な精神的虐待などの事情によっては慰謝料が問題になる場合があります。
録音やLINE、相談記録など、具体的な行為を確認できる資料を残しておくことが重要です。
Q. 性格の不一致でも慰謝料をもらえますか?
性格や価値観が合わないというだけでは、一般的には慰謝料の原因となる不法行為があるとは限りません。
相手に具体的な有責行為があるかどうかを確認する必要があります。
まとめ
離婚慰謝料は、離婚すれば必ず受け取れるものではありません。
不貞行為、DV、悪意の遺棄など、相手の行為によって精神的苦痛を受け、離婚に至った場合などに請求できる可能性があります。
金額についても一律の相場が決まっているわけではなく、婚姻期間、行為の内容や期間、婚姻関係への影響などによって異なります。
また、相手が事実を否定する場合には、慰謝料の原因となる行為を裏付ける証拠が重要です。
まずは手元にあるLINE、写真、診断書、録音、相談記録などを整理し、相手との話し合いが難しい場合には調停や訴訟などの方法を検討しましょう。
離婚後でも慰謝料請求調停を利用できるため、「離婚してしまったからもう請求できない」とすぐに諦める必要はありません。

