離婚を決めても、すぐに離婚届を提出するのはおすすめできません。
離婚前には、相手の収入や夫婦の財産の確認、養育費、親権、住まい、仕事、公的支援など、確認しておきたいことがたくさんあります。特に相手の収入や財産に関する情報は、別居や離婚をした後では確認しにくくなることがあります。
また、養育費や財産分与、親権なども、離婚後に取り決めようとすると相手と連絡が取りにくくなり、話し合いが難しくなることがあります。
この記事では、離婚前にやっておきたいことを10個のチェックリストにして紹介します。「何から準備すればいいかわからない」という方は、上から順番に確認してみてください。
実務で見てきたリアルな現実
実務に携わった経験から、まず大切なことをお伝えします。
「自分だけで何とかなる」と勢いで離婚してしまい、後から金銭面で困るケースは少なくありません。実際に生活を始めてみると、家賃や光熱費だけでなく、子どもの学校費用、医療費、食費など想像以上にお金がかかり、生活費の工面が難しくなることがあります。
だからこそ、離婚前に養育費や財産分与など、受け取れる可能性のあるお金について確認しておくことが大切です。慰謝料を請求できる事情がある場合には、慰謝料についても検討しておきましょう。
感情的になっている時こそ、離婚後の自分と子どもの生活を考えて、できる準備から進めておくことをおすすめします。
① 相手の収入を把握しておく
養育費の金額を考えるうえで、相手の収入は重要な情報です。適法に確認できる範囲で、同居している間に以下のような書類や情報を確認しておきましょう。
・源泉徴収票
・給与明細
・確定申告書(自営業の場合)
離婚後や別居後は相手の収入状況を確認しにくくなることがあります。確認できる資料がある場合は、離婚前に整理しておくとよいでしょう。
② 夫婦の財産を把握しておく
財産分与を考えるためには、まず夫婦にどのような財産があるのか把握する必要があります。
確認しておきたい主な財産は以下のとおりです。
・預貯金
・不動産
・生命保険、学資保険
・株式、投資信託などの有価証券
・退職金
・自動車
・住宅ローンなどの負債
通帳の残高や金融機関名、不動産や保険の情報など、適法に確認できるものは整理しておきましょう。
ただし、婚姻中に存在する財産がすべて財産分与の対象になるわけではありません。婚姻前から所有していた財産や、婚姻中でも相続や贈与によって取得した財産などは、原則として財産分与の対象にならない場合があります。
離婚後に「こんな財産があったなんて知らなかった」とならないよう、離婚前に夫婦の財産をリストアップしておくことが大切です。
③ 養育費の相場を確認しておく
子どもがいる場合は、離婚前に養育費の目安を確認しておきましょう。
養育費は、支払う側と受け取る側の収入、子どもの人数や年齢などによって金額が変わります。相手から金額を提示されたとしても、相場を知らなければ、その金額が適正なのか判断することができません。
養育費の目安は裁判所の養育費算定表などを参考にできます。当サイトの「養育費かんたん計算ツール」でも目安を確認できます。
離婚前に一度計算しておくことをおすすめします。
④ 必要な証拠を集めておく
不倫、DV、モラハラなどが離婚の原因となっており、慰謝料請求などを検討している場合には、証拠を確保しておくことも重要です。
たとえば、次のようなものが証拠になる可能性があります。
| 離婚原因 | 証拠の例 |
|---|---|
| 不倫 | LINEやメール、写真、ホテルの利用がわかる資料など |
| DV | 診断書、けがの写真、録音、相談記録など |
| モラハラ | 録音、LINEやメール、日記、相談記録など |
慰謝料請求に必要な証拠について
実務経験から特に重要だと感じるのは、「疑っている」というだけではなく、客観的に確認できる資料を残しておくことです。
不貞慰謝料を請求する場合には、配偶者と第三者との性的関係を裏付ける証拠が重要になります。単に異性の家や一般的なホテルへ行ったという事実だけでは、証拠として十分かどうかは個別に判断する必要があります。
DVやモラハラについても、診断書、写真、録音、メッセージ、相談記録など、当時の状況を確認できる資料が重要です。
離婚後や別居後では集めにくくなる証拠もあります。ただし、相手のアカウントへ無断でログインするなど違法となる可能性のある方法は避け、適法な範囲で証拠を確保してください。
⑤ 離婚後の住まいを決めておく
離婚後にどこで生活するのかも、できるだけ早い段階で考えておきましょう。
・実家に戻る
・賃貸住宅を探す
・公営住宅への申込みを検討する
・現在の自宅に住み続ける
子どもがいる場合には、学校や保育園、通学時間なども考える必要があります。
住む場所によって毎月の生活費も大きく変わります。離婚後の家計を考えるためにも、住まいと家賃の目安は離婚前に確認しておきましょう。
⑥ 当面の生活費を考えておく
離婚直後は、引っ越し費用や家具・家電の購入費など、普段とは違う出費が発生することがあります。
可能であれば、離婚後しばらく生活できる資金を準備しておくと安心です。必要な金額は家賃、収入、子どもの人数などによって異なるため、離婚後の毎月の支出を一度書き出してみましょう。
また、離婚前に別居する場合には、収入などの状況によって相手に婚姻費用を請求できる場合があります。
婚姻費用とは、夫婦や子どもが生活するために必要となる費用です。離婚成立前に別居を考えている場合には、婚姻費用についても確認しておきましょう。
⑦ 離婚条件を整理しておく
離婚後でも話し合える事項はありますが、離婚が成立すると相手と連絡が取りにくくなったり、話し合いに応じてもらえなくなったりする可能性があります。
そのため、離婚届を提出する前に、少なくとも次の内容について確認しておくことをおすすめします。
・親権
・子どもの監護に関すること
・養育費の金額、支払方法、支払期間
・親子交流の頻度や方法
・財産分与
・慰謝料
・年金分割
2026年4月1日からは、離婚後について父母双方を親権者とする共同親権と、父母の一方を親権者とする単独親権のいずれも選択できる制度になっています。
子どもがいる場合には、離婚後の親権だけでなく、実際に誰が子どもと生活するのか、学校や医療などについてどのように判断していくのかも含めて考えることが重要です。
⑧ 合意した内容を書面に残す
養育費などについて話し合いがまとまっても、口約束だけで終わらせるのはおすすめできません。
離婚した後に、
「そんな約束はしていない」
「金額が違う」
「いつまで払うか決めていない」
といったトラブルになる可能性があるためです。
合意した内容は書面に残しておきましょう。
| 書類 | 特徴 |
|---|---|
| 離婚協議書 | 当事者同士で作成できる |
| 公正証書 | 一定の要件を満たせば強制執行の根拠になる |
| 調停調書 | 家庭裁判所の調停で合意した内容が記載される |
2026年4月からは、書面で取り決めた養育費について一定の要件を満たす場合、先取特権による差し押さえを利用できる制度も始まっています。
ただし、離婚協議書と公正証書では利用できる手続きが異なります。養育費をどの方法で取り決めるかについても、離婚前に確認しておきましょう。
⑨ 仕事や収入の準備をしておく
離婚後に自分の収入だけで生活することになる場合には、仕事についても早めに考えておきましょう。
現在働いていない場合や収入が少ない場合には、
・就職活動を始める
・ハローワークに相談する
・職業訓練について調べる
・資格取得支援制度を確認する
・ひとり親向けの就労支援を確認する
などの方法があります。
すぐに十分な収入を得ることが難しい場合もあります。離婚してから仕事を探し始めるのではなく、可能な範囲で離婚前から情報を集めておくと安心です。
⑩ 離婚後に利用できる公的支援を確認する
ひとり親家庭が利用できる手当や支援制度もあります。
代表的なものには、
・児童扶養手当
・児童手当
・ひとり親家庭等医療費助成制度
・就学援助制度
・母子父子寡婦福祉資金貸付金
などがあります。
制度によって所得要件や申請条件があり、自治体独自の支援制度が用意されていることもあります。
離婚後に自動的にすべての制度が適用されるわけではありません。離婚前から自分が利用できそうな制度を確認し、離婚後は市区町村の窓口で手続きを確認しましょう。
離婚前チェックリスト
離婚届を提出する前に、もう一度確認してみてください。
□ 相手の収入を確認した
□ 夫婦の財産をリストアップした
□ 養育費の相場を確認した
□ 必要な証拠を確保した
□ 離婚後の住まいを考えた
□ 当面の生活費を確認した
□ 親権や養育費などの離婚条件を整理した
□ 合意した内容を書面にした
□ 仕事や収入について準備した
□ 利用できる公的支援を確認した
すべてを完璧に準備してからでなければ離婚できないわけではありません。
ただ、離婚後になって「確認しておけばよかった」と困りやすい項目なので、自分に関係するところだけでも確認しておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 離婚の準備をしていることを相手に知られたくありません
相手の収入や財産、必要な証拠などについて、適法に確認できる範囲で情報を整理しておきましょう。
DVなどがあり、離婚準備を知られることで危険が生じる可能性がある場合には、安全の確保を優先し、自治体の相談窓口や警察、弁護士などへの相談を検討してください。
Q. 準備が整う前に相手から離婚を迫られた場合は?
相手から離婚を求められたからといって、その場ですぐに離婚届へ署名する必要はありません。
養育費、親権、財産分与、住まいなどを確認したうえで判断しましょう。夫婦だけで話し合うことが難しい場合には、専門家への相談も検討してください。
Q. 養育費は離婚してから決めてもいいですか?
離婚後に養育費について取り決めることもできます。
ただし、離婚後は相手が話し合いに応じなくなったり、連絡が取りにくくなったりすることがあります。可能であれば離婚前に金額や支払期間、支払方法などを話し合い、書面に残しておくことをおすすめします。
Q. 離婚前に弁護士へ相談した方がいいですか?
必ず弁護士へ依頼しなければならないわけではありません。
ただし、相手と離婚条件でもめている、多額の財産がある、不動産がある、DVや不倫がある、親権について争いがあるなどの場合には、離婚届を提出する前に相談することも検討しましょう。
まとめ
離婚前には、離婚届を提出すること以外にも準備しておきたいことがあります。
特に、相手の収入や夫婦の財産は、別居や離婚後では確認しにくくなる場合があります。子どもがいる場合には、養育費や親権、親子交流についても離婚前に整理しておくことが大切です。
また、離婚後の住まいや仕事、公的支援まで考えておくと、離婚後の生活を具体的にイメージしやすくなります。
すべてを一度に準備する必要はありません。まずはこの記事のチェックリストを使って、今確認できるものから一つずつ進めてみてください。
離婚条件について判断に迷う場合や、相手との話し合いが難しい場合には、必要に応じて専門家への相談も検討しましょう。

