「離婚協議書には何を書けばいい?」
「自分たちだけで作れる?」
「養育費についてどう書けばいい?」
協議離婚をする場合、離婚することだけでなく、養育費や財産分与、親子交流などについて話し合うことがあります。
その内容を口約束だけで終わらせず、書面にまとめたものが離婚協議書です。
離婚協議書を作っておけば、離婚後に「そんな約束はしていない」「金額が違う」といったトラブルを防ぎやすくなります。
この記事では、離婚協議書に書いておきたい内容や作成するときの注意点、基本的なテンプレートを紹介します。
※テンプレートは一般的な例です。個別の事情によって必要な条項は異なります。
離婚協議書とは
離婚協議書とは、協議離婚をする夫婦が、離婚に伴って話し合った内容を書面にしたものです。
たとえば、
- 離婚すること
- 離婚後の親権
- 養育費
- 親子交流
- 財産分与
- 慰謝料
などについて記載します。
離婚協議書には決まった書式があるわけではなく、自分たちで作成することもできます。
ただし、書き方が曖昧だと、離婚後に解釈をめぐって争いになる可能性があります。
離婚協議書に書いておきたい内容
① 離婚についての合意
まず、夫婦双方が協議離婚することに合意していることを記載します。
必要に応じて、
- 離婚届をいつ提出するか
- 誰が提出するか
なども決めておきます。
② 親権・監護について
未成年の子どもがいる場合には、離婚後の親権について定めます。
2026年4月1日からは、離婚後について父母双方を親権者とする共同親権と、父母の一方を親権者とする単独親権のいずれも選択できる制度になっています。協議離婚では父母が協議して定めます。
ただし、共同親権と単独親権のどちらが原則というものではありません。
子どもの利益を最も優先して決める必要があります。
共同親権の場合には、
- 日常生活で誰が子どもを監護するか
- 学校や医療など重要な事項をどう決めるか
- 父母間の連絡方法
などについても整理しておくと、離婚後のトラブルを防ぎやすくなります。
③ 養育費
養育費については、できるだけ具体的に記載します。
少なくとも、
- 月額
- 支払い開始時期
- 支払日
- 振込先
- 支払い終了時期
- 振込手数料の負担
- 特別な教育費・医療費の負担
などを検討しましょう。
たとえば、
「甲は乙に対し、子○○の養育費として、令和○年○月から子が満○歳に達する月まで、毎月○万円を毎月末日限り、乙指定の銀行口座に振り込む方法で支払う」
など、金額と期限を明確にします。
④ 親子交流
親子交流についても、離婚後にトラブルになりやすい項目です。
必要に応じて、
- 頻度
- 時間
- 場所
- 子どもの受け渡し方法
- 宿泊の有無
- 学校行事や長期休暇の扱い
- 連絡方法
などについて話し合います。
ただし、細かく決めすぎることでかえって対応できなくなる場合もあります。
子どもの年齢や生活状況の変化に応じて協議できるような条項を設ける方法もあります。
⑤ 財産分与
婚姻中に夫婦の協力によって形成した財産について、どのように分けるか記載します。
たとえば、
- 預貯金
- 不動産
- 自動車
- 保険
- 有価証券
- 住宅ローン
などです。
単に「財産を半分にする」ではなく、具体的な財産と分け方、支払期限などを明記した方がよいでしょう。
なお、2026年4月1日以降に離婚した場合、離婚後に家庭裁判所へ財産分与を申し立てられる期間は原則5年です。2026年3月31日以前の離婚については原則2年です。
⑥ 慰謝料
慰謝料について合意している場合には、
- 金額
- 支払期限
- 一括か分割か
- 振込先
などを記載します。
分割払いにする場合には、支払いが遅れた場合の扱いなども検討します。
⑦ 清算条項
離婚協議書では、最後に清算条項を設けることがあります。
これは、
「この離婚協議書に定めたもの以外には、お互いに金銭を請求しない」
という趣旨の条項です。
ただし、何でも一律に清算条項を入れればよいわけではありません。
まだ財産の調査が終わっていない場合や、慰謝料などについて今後請求を検討している場合に広い清算条項を入れると、後から請求できるか問題になる可能性があります。
内容を理解したうえで入れることが重要です。
離婚協議書のテンプレート
以下は一般的な例です。
そのままコピーして使用するのではなく、自分たちの状況に合わせて内容を調整してください。
離婚協議書
甲(氏名)と乙(氏名)は、協議離婚することについて合意し、離婚に伴う事項について次のとおり合意した。
第1条 離婚
甲及び乙は、協議離婚することに合意する。
離婚届は、令和○年○月○日までに○○が市区町村へ提出する。
第2条 子どもに関する事項
甲及び乙の子○○(令和○年○月○日生)について、離婚後の親権者を○○と定める。
※共同親権とする場合には、現在の制度に沿って内容を確認し、必要に応じて子どもの監護や親権行使についても具体的に定めてください。
第3条 養育費
甲は乙に対し、子○○の養育費として、令和○年○月から令和○年○月まで、月額○万円を毎月末日限り、乙指定の金融機関口座へ振り込む方法により支払う。
振込手数料は甲の負担とする。
進学、入院その他通常の養育費では賄えない特別な費用が発生した場合には、甲乙がその負担について協議する。
第4条 親子交流
甲と子○○との親子交流については、子どもの意思や生活状況を尊重しながら、月○回程度実施する。
具体的な日時、場所、受け渡し方法については、その都度甲乙が協議する。
第5条 財産分与
甲は乙に対し、財産分与として金○万円を令和○年○月○日までに、乙指定の金融機関口座へ振り込む方法により支払う。
第6条 慰謝料
甲は乙に対し、慰謝料として金○万円を令和○年○月○日までに支払う。
※慰謝料について取り決めがない場合は不要です。
第7条 事情変更
養育費その他子どもに関する取り決めについて、収入の大幅な変化、進学、病気その他重要な事情の変更が生じた場合には、甲乙は協議する。
第8条 清算条項
甲及び乙は、本協議書に定めるものを除き、離婚に関して相互に債権債務がないことを確認する。
以上の合意を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自1通を保有する。
令和○年○月○日
甲
住所:
氏名:
乙
住所:
氏名:
離婚協議書は署名・押印しないと無効?
離婚協議書について、
「押印しなければ法的効力がない」
と思われることがありますが、必ずしもそうではありません。
一般に契約は当事者双方の意思が一致すれば成立し、特別な定めがない限り、押印そのものが契約成立の条件ではありません。
ただし、離婚後に相手から、
「その書類を作った覚えがない」
「その内容には合意していない」
と争われる可能性を考えると、双方が内容を確認したうえで署名し、それぞれ原本を保管しておくことは重要です。
実印や印鑑証明書を利用するかどうかについては、取り決める内容や公正証書化の予定などに応じて検討します。
実務で見てきた離婚協議書のトラブル
① 作っただけで相手の合意が確認できない
私が離婚や養育費に関する実務に携わる中では、一方が離婚協議書の案を作ったものの、相手が署名しておらず、後になって合意そのものを争われるケースがありました。
離婚協議書は「作成したこと」よりも、双方がその内容について合意していることを確認できる状態にしておくことが重要です。
② 金額や期間が曖昧
たとえば子どもが3人いるのに、
「養育費として毎月10万円を支払う」
とだけ書いていると、
「1人が成人したらいくら減るのか」
「全員分として10万円なのか」
などで後から争いになることがあります。
子どもごとの金額や支払期間を明確にする方法も検討しましょう。
③ 言葉の解釈でトラブルになる
実務では、
「予備校費用を負担する」
と定めたところ、実際には塾に通ったため、
「予備校ではないから払わない」
と主張されたケースもありました。
このように、ちょっとした言葉の違いが後の争いにつながることがあります。
特別費用については、
「大学受験のための塾・予備校その他これに類する費用」
など、どこまで対象にするのか考えておくことが重要です。
2026年4月から離婚協議書による養育費回収制度が変わった
2026年4月1日から、養育費の回収制度が拡充されました。
父母が養育費について書面で取り決めた場合、一定の養育費については法律上の先取特権が認められ、裁判所で担保権実行による差押えを申し立てられる場合があります。
対象となる額は、子ども1人につき月額8万円が上限です。
ただし、
「離婚協議書があれば、公正証書とまったく同じように何でも強制執行できる」
という意味ではありません。
8万円を超える養育費を含めて、取り決めた養育費全額について一般的な強制執行をできるようにしておきたい場合には、公正証書や調停調書などとの違いを理解しておく必要があります。裁判所も、債務名義による執行では取り決めた養育費全額を対象とできる一方、先取特権による形成養育費の担保権実行は月8万円×子どもの人数が上限と案内しています。
離婚協議書と公正証書の違い
| 離婚協議書 | 公正証書 | |
|---|---|---|
| 作成 | 当事者で作成可能 | 公証人が作成 |
| 費用 | 自分で作れば基本的に作成費用なし | 手数料等が必要 |
| 養育費の差押え | 2026年4月以降、一定額について先取特権による手続が可能 | 一定の要件を満たせば債務名義として強制執行可能 |
| 証拠としての位置づけ | 私文書 | 公文書 |
| 作成時の手間 | 比較的小さい | 公証役場との手続が必要 |
単純に「どちらが上」というより、取り決める内容や将来の未払いへの備え方によって選ぶことになります。
公正証書にした方がいいケース
離婚協議書だけで終わらせず、公正証書化を検討した方がよいケースもあります。
たとえば、
- 養育費を長期間支払ってもらう
- 養育費が高額
- 財産分与や慰謝料など多額の金銭支払いがある
- 分割払いの約束がある
- 将来の不払いが心配
といった場合です。
公正証書を作成する場合には、強制執行認諾文言をどのように入れるかも重要になります。
離婚協議書を作るタイミング
可能であれば、離婚届を提出する前に離婚条件について整理し、離婚協議書を作成しておく方がよいでしょう。
離婚成立後は、
「もう離婚したのだから話したくない」
「今さら条件を決めたくない」
と相手が話し合いに応じなくなる場合があります。
ただし、離婚後でも養育費や財産分与などについて話し合える場合はあります。
収入印紙は必要?
「離婚協議書には必ず収入印紙を貼る」とは限りません。
印紙税は書類のタイトルではなく、その文書に記載されている契約内容によって課税文書に該当するかどうかが決まります。
財産分与で不動産を譲渡する内容など、具体的な条項によって取扱いが変わる可能性があります。
迷う場合には税務署などへ確認してください。
よくある質問
Q. 離婚協議書は自分で作れますか?
はい。
決まった書式はないため、自分たちで作成できます。
ただし、財産分与が高額な場合、住宅ローンや不動産がある場合、養育費や親権について争いがある場合などには、内容を専門家に確認してもらうことも検討しましょう。
Q. 離婚協議書には必ず押印が必要ですか?
押印そのものが一般的な契約の効力発生要件とは限りません。
ただし、後で「合意していない」と争われるのを防ぐためにも、双方が内容を確認して署名し、原本を保管しておくことをおすすめします。
Q. 離婚後でも離婚協議書を作れますか?
離婚後でも、相手と合意できれば養育費などについて書面を作成できます。
ただし、財産分与などには期限があります。
2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与について家庭裁判所へ申し立てられる期間は原則5年です。
Q. 離婚協議書があれば養育費を差し押さえできますか?
2026年4月以降に発生する養育費については、一定の要件を満たす書面による取り決めがあれば、先取特権を利用した差押えを申し立てられる場合があります。
ただし、公正証書などの債務名義による強制執行とは仕組みが異なります。
まとめ
離婚協議書は、離婚時に夫婦で決めた内容を明確に残しておくための重要な書類です。
養育費や財産分与については、
- 金額
- 支払日
- 支払期間
- 支払方法
- 特別な事情が生じた場合の対応
などを具体的に記載することが大切です。
また、2026年4月からは、書面で取り決めた養育費について一定額まで先取特権による差押えを利用できる制度が始まっています。
一方で、離婚協議書が公正証書とまったく同じ効力を持つわけではありません。
長期間の養育費や高額な金銭の支払いがある場合には、公正証書化する必要がないかも含めて検討しましょう。
テンプレートはあくまで一般的な例です。
自分たちの事情に合わせて内容を調整し、不明な点や高額な財産がある場合には、弁護士などの専門家への確認も検討してください。

